2級建築士より1級建築士が優れているって幻想ですよ?

2級建築士が1級建築士より劣っているって感覚ありませんか?

先日お客様との間でこんな会話がありました。

お客様『明工さんに来る前に住宅を頼もうとしていた会社があったのですが、なんだか不安になってしまってやめてしまったんです』

私『それは残念でしたね。ちなみにどういったことが不安になったのですか?』

お客様『地場の工務店で、施工実績もそれなりにあって施工事例も自分達にあっていて安心していたのですが、会社を詳しく調べて見たらその工務店は2級建築士しかいなくて、1級建築士がいなかったんです。』

私『・・・・ん?それがどういった不安につながったのでしょうか?』

お客様『2級でも住宅は建てられるみたいですが、学生上がりの人や、とりあえず取っておこうみたいな人が多い資格みたいで、なんだか信用できなくなったんです。一生に一回の建物だから1級の建築士に頼みたいなって感情もありました。』

私『・・・・なるほど・・・・』

皆さんもこのお客様のような感覚はお持ちでしょうか?

確かに1級建築士は2級建築士の上位互換みたいな資格ですので、そう思われても仕方ないのかもしれませんが・・・・

今回はこの建築士の資格についてちょっと触れていこうと思います。

■実は『設計士』になるには資格は不要

最初にちょっとマメ知識から入ります。

意外に思われるかもしれませんが、実は『設計士』と名乗ること自体には、資格は要りません。

誰だって自分が設計士だって名乗ってOKなんです。

ただし、法に則った業務が出来るのは、木造住宅でかつ100未満の建物、あと建築士の補佐のみに限られます。

それ以外の建物の設計は法的に認められません。

なので、皆さんも自由に設計して頂いて大丈夫ですし、無資格で設計事務所に入社も出来ます。

しかし、無資格の方の名前を使い設計された建物は、小規模な建物に限られるってことになります。

一般的には無資格の人の設計で、申請をすることはほとんどありません。

■3種類ある『建築士』・・・・その差は建物の規模だけ

設計は誰でも出来ると言いましたが、実際に家を建てるには『建築士』の資格を持った方が設計をすることがほとんどになります。

その建築士の資格ですが、あまり知られていないと思いますので、建築士の資格を簡単に紹介したいと思います。

1.木造建築士

この資格は一般の方だとあまり知らない方も多い資格かと思います。

この資格は書いて字のごとく、木造住宅のみの設計を許可された資格になります。

また、木造であることに加え、建物の階数が2階以下、建物の規模が300以下であることを制限されます、

300と言うと坪数に換算すると約90坪。

2階屋の一般住宅であれば十分な規模になります。

しかし、コンクリート住宅や鉄骨系の建物、また3階建てなどは建築出来ないので、全ての住宅が建てられるわけではありません。

地場で活躍している大工さんなどが多く取得しているイメージが強い資格になります。

2.2級建築士

今回の問題にもなった資格の2級建築士。

こちらの資格は木造建築士に比べ、設計の幅が広がり、建物の構造は問われませんのでどんな建物も設計することが可能になります。

しかし、建物の高さが13m、軒高が9mを超えない建物、また面積は1000以下の物とされています。

建築の世界で言うと、割合小ぶりな建物までに制限をされており、主に戸建て住宅や小規模な店舗、工場などを手掛けている方が多い印象があります。

3.1級建築士

こちらの資格は一切の制限が無く、全ての規模の設計が可能になります。

その分、多岐に渡った専門知識が必要になってくることや、資格取得が難しい部類の試験になるために、どの会社でも貴重な人材として取り扱われているイメージがあります。

以上の3つの建築士の資格があります。

この3つの資格の差は、建物の設計可能な規模で変わっています。

■1級だから2級よりも良い設計が出来る???

さて、ここからが今回の本題になります。

冒頭であったお客様のイメージでは、1級建築士>2級建築士でしたが、前記に示したように、1級でも2級でも建物の規模が同じであれば、資格的にはなんら差が無いことが分かります。

ちなみに大規模なビルや工場などを日頃取り扱っている建築士は、それだけ大きな物が造れるのだから、住宅なんて小規模な物なら簡単に造れると思っていませんか?

確かに資格的にはなんの問題もなく造れます。

しかし、毎日住宅のことばかりを考えて設計している2級建築士と、住宅はほとんど取り扱っていない1級建築士だったら、どちらの方が良い住宅を造れると思いますか・・・?

住宅はただ箱を造るだけの仕事ではなく、そこに住む人達の生活や未来、安全や安心などを作り上げていく仕事になります。

当然、大規模な建物も箱を造るだけではなく、工場なら工場なりの、店舗なら、ビルなら・・・・各それぞれの役割や大事にしなくてはいけないことがあります。

それが住宅と同じであればいいのですが、実際には住宅とはまったく異なった建物になります。

■まったく住宅を造ったことのない建築士なら1級でも2級でも良い家は造れない。

今回のポイントはここになります。

実は建築の資格はグレードが上がっても、良い建物を建てることが出来るわけではなく、ただ規模が大きくなるだけの資格なんですね。

規模が大きくなるのは重要なことですし、専門知識も沢山必要になります。

だからといって、良い住宅が造れるのか・・・

それは別問題であると認識をしておかなければいけません。

今回のお客様のように、施工事例なども気に入っていて、しっかりと実績がある会社なら、個人の住宅であれば、なんの問題もなく建ててもらえたはずですし、変に肩書だけ1級建築士である方に頼むよりはずっといい家になったはずです。

極論を言うのなら、2階屋で良かったら木造建築士の資格だけでも良かったことだったですね。

■ではなぜこういった資格のスタイルになっているのか?

では建築士はなぜこうった資格体系をとっているのでしょうか?

それは資格を与える国の考えが大きく反映しています。

国は資格を与える際にまず第一に考えるのが、その安全性です。

国が試験をし、それに合格をするとその人は国のお墨付きを持って建築をおこなえることになります。

そんな国のお墨付きがある建物ですから、木造建築士でも、1級建築士でも、その資格の範囲内で建てた建物は、安全でかつしっかりとした建物であることが大前提でなければいけません。

国は国民を守ることが義務となっており、国が許可を出した人や建物が、安全でないことで、ケガをしたり、問題になることはあってはならないからです。

木造建築士だから多少弱い建物は建てて良いよとか、1級建築士だから強い建物を建てなくてはいけない、なんてことはなく、一律に誰でも強い建物を建てなくてはいけない法律になっています、まあ常識で考えたら当たり前なことなんですが^^;

そんな国からしてみたら、その建物のデザイン性や、住宅であれば住みやすい間取りなんかは、はっきり言って2の次3の次。

安全でしっかりとしており、人が暮らすのに最低限な明りや換気、耐震性などがあれば、文句は言いません。

ですが、建物は大きくなればなるほど、その計算や造り方、また周りに及ぼす影響などが増えていきます。

だから、誰でも彼でも大きな建物を建ててもらったら、問題が山積みになる可能性があり困るのです。

なので、資格を用意し、大きな建物を建てるにはしっかりとした知識や経験がある人にのみ建てることを許可している。

それが、国から認められた建築士と言う人たちになります。

一般的な感覚の1級建築士は良い建物を建てる人と言った感覚は間違いで、1級建築士は大きな建物が建てられる人が正解になります。

■まとめ

今回の話は以上になります。

ちょっと考えたら当たり前なことですが、一般的な常識からすると意外に思われた方も多いのかなっと思います。

この記事を見ている方の多くは、一般住宅を求めている方でしょうから、もし今回のことのような心配があったら自信をもってその会社を選んであげて下さい。

きっと良い仕事をしてくれると思いますよ^^

最後にお客様との残りの会話を書いて終わりにします。

■その後のお客様との会話

私『・・・・・なるほど・・・・・』

私『その件について、ちょっとお話をしたいのですが、よろしいですか?』

お客様『どうぞ』

私『ありがとうございます。では早速ですがちょっと想像してもらいたいことがあります』

私『昔に料理の鉄人って番組ありましたよね?私、そこに出てきた中華の鉄人って言われた人のお店に行ったことがあるんです』

私『当時お付き合いしていた社長さんが、知り合いだと言うことで席を設けてくれて、予約がいっぱいなところを無理して入れてくれたんですね』

私『メニュー表を見たら、すごく値段が高くてびっくりしましたが、その分出てくる料理はどれも斬新で、どれもおいしくて箸が止まらないってこういうことなんだなって思いました』

お客様『へーうらやましいですね。私のそのお店の料理を食べてみたいです』

私『また機会があればご紹介しますね。ただ、その際に騒動にまでなった問題になったことがあるんです』

お客様『それはなんですか?』

私『その問題とは・・・・ラーメンが美味しくなかったんです^^;』

お客様『え?ラーメンですか?なんでラーメンでそんな話なったのですか?』

私『その社長さんが大のラーメン好きで、料理の締めにってことでラーメンを頼んだのがきっかけだったんです』

私『最初はメニューに無かったので、出来ないと言われていましたが、たっての頼みとのことで作ってもらったんですね』

私『私達はこんな素晴らしい料理を提供してくれるところだから、ラーメンみたいな簡単な料理だったら、さぞかし美味しい物が食べられると期待をしていました』

私『しかし、出てきたのは決して不味いわけではなかったですが、美味しいかと言われると中々判断が難しい味で、私以外の方も同じような顔をしていたので、評価は同じだったんだと思います』

私『そんな状況を見て、社長さんがシェフを呼べみたいなことになってしまい、しばらく経ってシェフが出てきたんです』

私『社長さんは、ちょっと起こった口調でラーメンが不味いと、なぜこんな不味いものを出したんだと切り出したんですね』

私『そしたら、シェフはちょっと呆れたように、こう言ったんです』

私『社長。このラーメンは最高級の鳥を使い、干しアワビなども使った最高級のスープで作ったラーメンなんです。普段作りなれていない物を作らされて、それを不味いと言われるのは結構ですが、だったら次は当店ではなく町のラーメン屋に行くと良い。そっちの方が美味しいラーメンなんて沢山あるから』

私『その時私は確かに!って思ったのを覚えています。私の近所の有名なラーメン屋の方がよっぽど美味しいよねって^^;』

私『その後は、シェフに言われた社長が怒ってしまって、収集が付かずに店を出ることになってしまったのですね』

私『それ以来行きづらくて行ってはいないのですが、あの経験は中々に大変な経験でした』

お客様『それは大変でしたね・・・・ただ、その話と今回の話は何が繋がっているのですか?』

私『このシェフと1級建築士、2級建築士しかいなかった工務店と町のラーメン屋、この構図がまったく一緒だと思ったんです』

お客様『と言うと・・・?』

私『ラーメンを作ってくれたシェフは1流でなんでも出来て世間的にも認めらています。しかし、町のラーメン屋は美味しいラーメンは造れますが、きっとシェフのような中華料理は作れないでしょうし世間的にはシェフの足元にも及びません。しかしラーメンだけに限ると今回はラーメン屋さんに軍配が上がったわけです。』

私『これは家にも当てはまって、どれだけ素晴らしく有名な建築物を多く手がけた級建築士さんよりも、毎日住宅のことばかり考えている2級建築士さんの方がよっぽどいい家を造ることがあります。』

私『今回のお客様が良いと思っていた工務店さんも、住宅に限ればそこらにいる1級建築士よりも良い家を建てているんだと思います』

私『だって、契約をしようとするくらい気にっていた会社さんだったんですよね?お客様の目がおかしくなければきっといい会社さんなんだと思います』

お客様『でも1級と2級ではかなり差があるんですよね・・・?』

私『その差は良い家を建てる差ではなく、大きな建物を建てられるかどうかの差なんです』

お客様『え???それはどういうことなんですか・・・・?』

*以降は今回の記事のような説明をしました。